夢日記

夢がないのにユメちゃん、未来がないのにミラちゃん

りっちゃん(2009年)

りっちゃんは携帯を一心不乱にいじっています。ぐらりと揺れた電車の中、わたしの体はりっちゃんの鞄を引っ掛けた肩に思い切り傾ぎました。りっちゃんは鞄を足の間に挟んだりしてない。よかった。りっちゃんの学生鞄には色々がじゃらじゃらついてて特に目をひくのがスティッチのぬいぐるみ。わたしが教室で「懐かしい!デジモンだあ!」って言ったら空気が凍った、あのちょっとコワもての。りっちゃんの指は規則的に動いてる。祈るように真摯な目。なにを打ってるのか、あとすこし、あとすこし、近付けば見れるのに。念じていたら酷いブレーキが、かかった。わざと眉をひそめてりっちゃんに思い切りもたれて、わたしは見た。りっちゃんの携帯の画面は一面オレンジだった。何故か猿の絵文字でうめ尽くされてる。それは現在進行形で。親指を縦にスライドさせるたびに猿はりっちゃんの携帯に増殖していく。目にも止まらぬスピードでりっちゃんの指はこのままいけばみっちり限度、一万匹の猿を生み出す。りっちゃんは猿の大群を誰かに送るのかな。きっと送らない気がする。りっちゃんの祈りは長すぎて悪戯メイルとしてはどんびきだから。りっちゃんは今を潰すために猿を産んでる。潰さなくてもいいのに。わたしはりっちゃんをこんなに見てるのに。繋がる機械を握り締めたふたりはもしかしたら二度と近づけんかもしれんのに。りっちゃん。りっちゃん。りっちゃん。りっちゃん。繋がらない機械を思い切り握り締めたら手の中できゅうと鳴いた。