夢日記

夢がないのにユメちゃん、未来がないのにミラちゃん

少年、ガラスの兎、十四歳の夢

Sから借りた少女漫画を読んでいる。
中国人の少年が「昔、ガラスで兎を作ったが、顔が割れてしまい人に売った。精巧に作ったから手放したくなかった」と話す。もう一人の日本人の少年が「ステンドグラス工房の先生が、割れたガラスをくっつける方法を知っていたよ」と言う。彼はにこにこ話している。ページをめくる。「君は神様の元へいける。セックスをしていないから。十四までにセックスをした子供は地獄へ落ちる。けっして天国には行けない」少年の顔は泣き笑いのように歪んでいる。彼は先生からレイプを受けたのだ。
わたしは起きて「怖い夢を見たの」とNに言う。Nは、あなたはかつての自分のトラウマを想起する夢ばかり見るから話を聞きたくないと言う。
目が覚める。Nは隣で眠っている。

 

押入れ 猫耳 男の子の夢

部屋の中。私が目覚めるころに少年が素早く押し入れに入る。黒いミニスカートにガーターベルト猫耳。頰のあたりがごつごつしているが、化粧をしたその姿は美しい。彼は鏡を見て「若い」と言う。わたしを向いて「おやすみなさい」と。襖を閉める。わたしも宵っぱりになれば彼と生活が合うのだろうか。床にはもう一人、男の子。八ヶ月になっても泣かなかった。脳性麻痺だから。彼はそのままずっと大きくなって、自分は妊娠していると思い込んでいる。テレビを見るとコンピューター系の専門学校のCMが流れている。宿題をしなくっちゃと思う。

 

美術部の夢

0416

 

美術部の卒業制作。いつまで経ってもテーマが決まらない。木で作った簡素な部屋のようなもの。見世物小屋を作るつもりだ。教室の正面で先生が「この中で差別的な作品を作る人はいませんか?」と訊く。わたしじゃないか、と思う。
先生がこちらを廻ってくる。わたしは「見世物小屋を作るつもりです、人形はワークショップで作ったものに髪を張り直して」と説明する。先生の顔が曇る。「あなたは自分一人の力で作った人形を使わないのですか」と。わたしは、あれは一日六時間、一週間かけないと作れません。かつて作ったものは顔が気に入らなくて、再びそこだけ作ろうと思っても、塗装を削り落とさないとないといけないこと。なにより受験勉強が忙しくて、正直もうそんな時間は取れないことを説明する。先生は「あなたは美術を捨てたのですね」と言う。わたしは「こんなことでなくなる美術なんてこちらから願い下げです」と返す。机の上の一輪の赤い薔薇。茎は長いままで花は小さい。各自、作品には薔薇を織り交ぜなくてはならない。わたしはこれを持って今から帰ろうか、と思案する。

卒業式、告白、薔薇の夢

0501

 

高校生活最後の日、卒業式。式まで四十分時間がある。先生が家が近い人は一時的に帰ってもいいと言う。部活の部長は緊張している。スピーチがあるから。わたしは帰宅を選ぶ。あのこは部長に告白するんじゃないか、と皆がひそひそ言う。今日は彼の誕生日でもある。
わたしは部屋に帰って眠ってしまう。時計は八時を指している。式まであと二十分しかない。薔薇のドライフラワーを入れていた花瓶が倒れて、布団の周りに散乱している。これはかつて部長がくれたものだ。今日は彼に薔薇を贈ろうかと思う。一本五百円、二十本で一万円。買えなくはない。でももう時間がない。

幻覚の夢

悪夢。逆上した弟に、彼が養殖しているミルワームと羽虫を振り掛けられる。わたしは全身を捩り、地団駄をしてそれを振り落とす。死骸で部屋中が真っ赤になる。その様子をiPhoneのカメラで何枚か撮る。

わたしはいつの間にか眠っていて、目覚める。窓の近くで日差しは柔らかく、ベランダから吹いてくる風が心地よい。汚いはずの冷蔵庫の中が整理され、割れた器がすべて金継ぎされている。母が仕事を休んで、家のことをしてくれているのだ。ベランダの床には新しい玉砂利が敷かれていて、その上を猫が気持ちよさそうに歩いたり、寝転んだりしている。

わたしは「猫は死んだはずなのになぜ見えるのか、確かに見えて触れるのだ」と母に訴える。母は「長く連れ添ったものはみな、そうなのだよ」と言う。わたしは虫の写真を見せようとするが、そんなものはないことに気づく。

あれはわたしの幻覚だ。家を出る前の弟に「もう二度と帰ってくるな」と叫び、本で殴ったのは本当。わたしの頭がおかしくなってしまったから、母は仕事を休んでくれて、わたしにとても優しい。猫だって本当はいないのに、話を合わせてくれている。それに気づいてとても悲しくなる。これは夢だ。わたしは夢の中でも頭がおかしいのだ。

指揮棒の夢

1919

静謐な写真。木製の天使。灯かなにか。そして細い銀の杖のようなもの。わたしはそれに手を伸ばす。指揮棒だ。持つと不思議な重みがある。四拍子のリズムを取っていると、持ち主が現れた。「ごめんなさい。これはあなたのいちばん大切なものでしょう」と謝る。彼は許す。制服を着ている。まだ彼は高校生でしかない。

彼を家に呼ぶ。わたしの家は汚い。脱衣所の床に彼は黒いペンで何か書いている。お茶で消えるよ、と言う。わたしは洗濯物を回し続けている。

彼とわたしは廊下にいる。正面の襖は閉まっている。彼は近づいてきてわたしの首にキスする。次は頬、次は唇。わたしは平静を装い、何も返さない。彼がふたたび唇を寄せてくると、くいと顎を引いて避ける。彼は「僕の妹も同じことをするよ」と言う。わたしは「妹にもキスしているの?」と拗ねる。

汚い台所の床を掃除している。クイックルワイパーをかけた後に水拭きが必要だというのが、二人の意見だ。わたしの家には客人に出す菓子すらない。

原付、小さな塚の夢

0753


Nと唐十郎かなにかの芝居を観に行く約束。直前までたくさんの本を鞄に詰めたり出したりしているが、母親に一冊にしろと言われる。さらに母親は劇場まで原付で行って帰れと言い、母と叔母と叔父とわたしでレンタルバイクを借りに行く。わたしは免許なんて持っていないのに。

ホームセンターに行く。借りようとするときになってわたしは店内に逃げる。入り口にはテレビを販促するためのおばさんがいる。髪を綺麗にセットしていて目が青い。言葉の発音がすこしおかしい。東南アジアの人に見える。カラーコンタクトをしているのだろうか。しばらくして外に戻ると免許証の確認をしていた。母が借りることになっていて、母が免許証を出している。

バイクが借りられた後、わたしは怒鳴る。外は夕方から昼間に変わっている。あなたはわたしを何度も無免許のまま原付を運転させている。もし事故を起こしたらどうするのだ。わたしを逮捕させる気か。わたしはこんなに法律の勉強をしているのに。前科がある状態では三年間は行政書士になれない。

民家の前、道の真ん中に地面に人の形をした盛り土がある。わたしはむしゃくしゃしていて、落ちている釘でその額に穴を開ける。叔父がそれは×××塚と叫ぶ。そこには子供の死体が横たわっていた。わたしは泣いて土で穴を埋める。ごめんなさい。ごめんなさい。原付のことはどうでもよくなる。そばにはひな祭りのような小さな道具が飾られている。わたしはお神酒を器に注ぐ。