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木には白い花と一緒に大きな松ぼっくりがついている。雪のように一面を白く染める。わたしは昨日ここで白いリュックサックを無くした気がするのだけど見つからない。鳩がものを食べている。近くからハッピーバースデーの歌が聞こえる。子供ではなく大人の声だ。終わったら、落ち着いた女性の食前の祈りが始まる。
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わたしたちの寄宿舎では、届いた手紙は集められ、朝礼の後にまとめて配られる。わたしの机に、茶色い封筒が置かれて、戒められる。「好きな人に届くべき」とはなんですか? わたしは宛先にそう書いていた。そしてこれは好きな人に届くべきだが、自分に転送されるのが相応しい内容です、と述べる。先生は呆れている。
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今日の美術の授業では、肖像画を描かないといけないのに、若いときの母親の写真を忘れてしまった。わたしが幼いときの写真ばかり手元にある。カメラに向かって撮って撮ってと動き回る子供だったんですよ、という母の声がブース越しに聞こえる(ここでは生活する場所と寝る場所がすこぶる小さい枠で囲まれている、地面には火を使う虫除け、夏には南京虫は出るのだろうか)部屋の隅に押し込まれたアンジェリックプリティのギンガムチェックのスカートを拾い上げる。美術の教室で座っていると、白無垢を着た先生が入ってくる。わたしは口に入れていたものをいちご柄のハンカチに吐き出す。白かったそれは、茶色く染まっている。