夢日記

夢がないのにユメちゃん、未来がないのにミラちゃん

数学・薬・軍歌の夢

高校生の夏休み明け、クラス替えがあってわたしはぎりぎり二組にいくことができた。成績を半分に割って良いものが一組二組、悪いものが三組四組に分けられる。わたしは最後から数えて何番目だっただろうか。見上げると前列には真面目にノートを取るA。半袖の制服から見える腕。彼女は秀才で有名だ。クラスには優しくて気のいい人しかいない。

次は数学の授業だ、黒板に回答を書かなくてはならない。席の左端から順に当たっているので、わたしの位置まで来ることはないだろう。しかし、新品のノートにはなにも書かれていない。かつて範囲を間違えてそこまで解いてしまったのだが、古いノートは今、手元にない。

隣の席のBが僕は少しもやっていないと言いながら急いで問題を解いている。瞼に赤い線。二重の手術をやってまだ日が浅いのだ。黒板に書いたのは間違ってやしないだろうか、文字が見えづらくはないだろうかと不安がっている。大丈夫、わたしが解いたのだってノートを一ページ半使った、小さい文字になるのは当たり前だと慰める。

彼の机にはビオフェルミンのシートの束がある。その錠剤はところどころ薄黄色くなっている。彼は問題の大問ごとに錠剤を一粒をノートに貼り付ける。わたしもそうだ。わたしたちは同じ病気をしているから。たちまちノートが分厚くなる。彼はわたしに中心が黄色くなったビオフェルミンをくれる。ごめんね、うちのお母さんはグミを舐めることしかできないから、という謝罪。いいのよ、黄色い部分は消しゴムで消すから、とわたしは言う。ほんとうは薄気味悪くて削り取ってしまたい。黄色いビオフェルミンは他のシートにも点在している。彼の母はこれを一つ取り出してねぶってはまた元に戻しているんじゃないかとわたしは訝しむ。あの母親ならやりねない。上品でひどく痩せた女。

わたしたちは布を共有している。それは茶色い毛布でも大きな国旗のようでもある。わたしは斜め上を見上げている。彼はわたしの横顔を見つめている。わたしは横顔に自信がないけれど好意の魔法で美しく見えることも分かっている。ふたりが布の下で手を繋ぎあったりしていることもみなは知ってるだろう。それがより性的なものに発展していくであろうこともわたしは分かっている。隣のクラスから大きな音で軍歌*1が聞こえてくる。わたしたちはそれを諳んじることができる。そのような時代に生まれているから。

 


A=Cかつ中学で気の良かった女の子
B=わたしが熱烈にアプローチしていたT

*1:出征兵士を送る歌