小学生のころ、クラスの離れた男の子を夕ご飯に誘う。彼の服はいつもぱりっとしていて強い粉石鹸の匂いがする。今日の夕ご飯はホルモン煮だ。うちではごちそうなので、××くんもよろこんでくれるだろうと思う。
彼がうちにくる。家族全員が食卓を囲んでいる。電気のかさ、天井にあるコンセントに鍋のコードを繋ぐ。
彼は、さらさんは料理が上手で、などと笑顔で褒め称えながら、食べ物をそばにあるゴミ箱へ捨てていく。わたしは、待って、あなたが嫌いな食べ物ならば、他の人が食べるから、と言う。彼は釈然としない顔をしている。
わたしは、彼の家は大皿をみんなでつつくようなことはしないのだ、一人につきたくさんのお皿がメニューごとにきちんと並べられているのだ、と気づき、自分の家の貧しさに恥ずかしく悲しくなる。