わたし、ショートカットの女。
ワンマン電車に乗って通学している。著しい光。いつもそこに立っている赤いトレンチコートを着た男のことが内心好きである。
学校にあまり通えない。心配している男の担任の先生の家に泊めてもらう。彼の実家のようなところ。母親に連絡をせず泊まったのでさぞかし心配しているだろうと思う。
朝、家に帰って化粧をする。白い化粧下地を塗って、粉を叩く。肌が汚い。目の下と顎のところの黒子をアイライナーで書き足す。顎の黒子が歪に大きくなりすぎて消そうとする。
学校に行く時間はとうに過ぎている。
母親が帰ってくる。仕事だったのかと聞くと、男の家に泊まっていたのだという。やたらとはしゃいでいる。
彼女はスピリチュアルにはまったタトゥーを入れた男にぞっこんである。彼の影響で宝石の色の果物の大きなピアスをつけている。あなたがつけていた桃色の数珠もそいつの影響かと言うと、そうかしらとうるさく騒ぎながら考えはじめる。
その男のどこがいいのかと訊くと、男らしさが口から出ていると言う。一緒にシャワーを浴びていると立ったままおしっこをするのだという。ほとばしる。そんなの汚いとなじる。あなたはちょっと悪い男はやめておけとあれだけわたしに言っておいて、自分ではそいつと付き合うのか、わたしはそんな男と付き合ったことはないと叫ぶ。わたしは叫びながら今の生活を咎めららないか逡巡する。
病院の中、廊下に老人がゆっくりと歩いている、これは夢だと気づく。
場面は切り替わりふたたび通学電車に乗っている、夢だったのか。母親のアクセサリーはその色の服を着た子供たちに変わっている。
緑色の服を着た男の子が立ち上がって目の前に出てくる。お前の考えていることはわかる、セックス、セックス、セックスと大声で歌い出す。年長の女の子が急いで他の女の子たちを引き連れて電車から降りる。
わたしは椅子に座っている。
赤いトレンチコートの男が、同じように私も歌いたいと言う。顔のいい男にろくなやつはいないといなされるが、彼はアレンジをしたのですと言って歌い出す。
身体みた男、身体みた男、身体みた男。
そこで映画が終わる。誰もいない電車から見えるよく晴れた景色に切り替わり、エンドロールが流れはじめる。