小学校の卒業旅行で、船に乗っている。
外はもう暗くなり、海も黒い。
甲板で、仲の良い女子一人と、男子二人のいるグループに出会う。
男子二人に「どこの学校へ進むの?」と訊く。
Bは意気揚々と「○○だ」と、Aは「××だ」と答える。
(みな小学生になっているが、Aは小学生のときにわたしが好きだった男の子で、Bは中学のころ部活が一緒だった友人である。)
Aの方が頭がいいのに、Bが県下でもっとも頭の良い私立中学に行くのを、不思議に思う。*1
わたしはどこに進学するか訊かれるのだが、どうしても学校の名前が思い出せない、それくらい、行きたくない中学にしか受からなかった。*2
しばらく話をして三人たちと離れるのだが「これでお別れなのだから、写真でも取りなよと」友人に言われる。
化粧をしていないことを思い出し、少し尻込むが、そうすることにする。
三人は見えなくなってしまったが、わたしたちのいる船室から甲板を挟んで向かいの船室に行く。そこに、Aがいた。
そこには広い空間に、大きな座椅子のようなものがたくさんあり、みなが位置や角度を変えて好き勝手に座ったり喋ったり眠ったりしている。
わたしはいつのまにか自分が白い下着しか身につけていないことに気づく。
部屋の壁には下着がたくさん吊されて売られているのだが、非実用なほどに華奢なキャミソールやショーツばかりで、ブラジャーが売られていない。自分たちのいる船室はそんなことがないのに、困ったなあと思う。
わたしはとりあえずベージュ色の毛布を体に巻いている。(これは船に備え付けてあるものだろう、やわらかい)彼の座っている座椅子まで歩いていると、お喋りをしていた二人が、会話を止めてわたしの姿を見る。
Aが毛布に入ってきて「僕のうちにおいでよ」と言う。「あなたの家は海沿いにあるの?」と訊ねる。「こういうときの"家”は本当の家を指さない」とAは半分呆れたような答え方をする。「あなたはいったいどんな生活をしてきたの」とわたしは言う。そのとき、Aの賢そうな顔が、生活のために落ち窪んだ俗物のように見える。