夢日記

夢がないのにユメちゃん、未来がないのにミラちゃん

恋人と「澁澤乙女」について

澁澤龍子『澁澤龍彥との日々』より


“二人がいちばん使った言葉、それは「バカ」でした。”


“「龍子ってほんとうにバカだね」とか「バカな龍子」とか、わたしの名前に「バカ」という枕言葉が常につくのですが、それは不愉快でなくむしろ快感でした。わたしは極楽トンボですから、「バカな龍子」とは「龍子ってほんとうにかわいいね」と言っているのだと思っていました。フェミニズムの人たちに叱られるかもしれませんが、澁澤はよく「おまえがもっと白痴ならいい」と言っておりましたし、わたしはも思考というものを停止させて、子猫のようにかわいがられ、ときどき爪を立ててひっかいたりしながら一生を過ごすのが最高と思っていたのです。”


“わたしも彼に「あなたってバカね」というのが口癖でした。日常的なことには全く疎い人でしたから、たとえば銀行について来て、自動支払機でお金を出すのを見ると、びっくりして自分もやりたいと、何度も何度もボタンを押して、お金をどんどん出してしまいます。今どき子どもでもこんなことはしないでしょう。駅の自動販売機で切符が上手に買えたと、自慢げに帰ってきたこともあります。やはりちょっとおバカさんだったのではないでしょうか。”

 

先日、神保町の古本市でこの本を購入し、読んでいるのですが、二人のエピソードがわたしと恋人のエピソードと似ていて、悲しくなってしまいました。

わたしたちはよく悪態をつきあっていました。
わたしは物を知らなくて、恋人は常識がなくて、お互いがそれぞれを罵り合っていました。

でもそれがコミュニケーションとして成立していて、とても楽しかったのを思い出します。

「さらは本も映画も知らなくていい、ただそこにいるだけでいい」と言われて、とても嬉しかったことも思い出します。
恋人は院試の際に、「澁澤乙女」について話したらしいのですが、それが一体なんなのか、わたしにはよくわかりません。グーグルで検索しても出てきません。実は、わたしは澁澤の本は二冊読んだきりで、それほど好きでもないのです。
「澁澤乙女」とは彼の著作や人物像や独特の物の見方を愛し、彼が好んだものを真似っこするような女の子たちのことでしょうか。一体どんな内容だったのか、もっと詳しく聞いておけばよかったです。