0416
美術部の卒業制作。いつまで経ってもテーマが決まらない。木で作った簡素な部屋のようなもの。見世物小屋を作るつもりだ。教室の正面で先生が「この中で差別的な作品を作る人はいませんか?」と訊く。わたしじゃないか、と思う。
先生がこちらを廻ってくる。わたしは「見世物小屋を作るつもりです、人形はワークショップで作ったものに髪を張り直して」と説明する。先生の顔が曇る。「あなたは自分一人の力で作った人形を使わないのですか」と。わたしは、あれは一日六時間、一週間かけないと作れません。かつて作ったものは顔が気に入らなくて、再びそこだけ作ろうと思っても、塗装を削り落とさないとないといけないこと。なにより受験勉強が忙しくて、正直もうそんな時間は取れないことを説明する。先生は「あなたは美術を捨てたのですね」と言う。わたしは「こんなことでなくなる美術なんてこちらから願い下げです」と返す。机の上の一輪の赤い薔薇。茎は長いままで花は小さい。各自、作品には薔薇を織り交ぜなくてはならない。わたしはこれを持って今から帰ろうか、と思案する。