1919
静謐な写真。木製の天使。灯かなにか。そして細い銀の杖のようなもの。わたしはそれに手を伸ばす。指揮棒だ。持つと不思議な重みがある。四拍子のリズムを取っていると、持ち主が現れた。「ごめんなさい。これはあなたのいちばん大切なものでしょう」と謝る。彼は許す。制服を着ている。まだ彼は高校生でしかない。
彼を家に呼ぶ。わたしの家は汚い。脱衣所の床に彼は黒いペンで何か書いている。お茶で消えるよ、と言う。わたしは洗濯物を回し続けている。
彼とわたしは廊下にいる。正面の襖は閉まっている。彼は近づいてきてわたしの首にキスする。次は頬、次は唇。わたしは平静を装い、何も返さない。彼がふたたび唇を寄せてくると、くいと顎を引いて避ける。彼は「僕の妹も同じことをするよ」と言う。わたしは「妹にもキスしているの?」と拗ねる。
汚い台所の床を掃除している。クイックルワイパーをかけた後に水拭きが必要だというのが、二人の意見だ。わたしの家には客人に出す菓子すらない。